池上さんの「世界を変えた10冊の本」を読んだ

池上さんの「世界を変えた10冊の本」を読んだ

これは面白い本だわ~。そしてとてもわかりやすいです。

とりあえず最初の「アンネの日記」だけでも。

なぜこれが世界を変えた本だと池上さんが考えたかというと、中東問題の行方に大きな影響力を持っているからだということです。

アラブ諸国以外の国際社会は、あまりイスラエルに強い態度をとらないが、ナチスドイツによって600万人もの犠牲者を出したことの象徴がアンネ・フランクであり、この日記だと。ぶっちゃけこの本を読むと、その痛ましさからユダヤ人に甘くなってしまうのでは?ということ。アラブ諸国ではこの本はあまり知られていないようですが。

まあイスラエルに色々言わないのは、イギリスがイスラエルとアラブ両方にいい顔をして矛盾した約束をしてこじれちゃったからとか、ユダヤ人が金融で成功して強い支配力があるからじゃないのとか、私はそういうのを聞いたことはあるけれど。

我々日本人には差別的な感覚がわかりませんが、そもそもユダヤ人がなぜ差別されたのかというと、新約聖書を構成するマタイによる福音書の中にあるエピソードが原因ではないかと。

イエスが十字架にかけられることになった時、ローマ帝国から派遣された総督が、本音ではイエスを助けたかったため、十字架にかける必要があるのかユダヤ人に尋ねたそうです。そうするとユダヤ人は「イエスを十字架につけろ」、「その血の責任は、我々と子孫にある」と叫んだとのこと。

要するに、たとえ報いが子孫にまで及んでも構わないから死刑にしろと言ったとのことなのです。これがあるためヨーロッパのキリスト教徒の中に、イエスを殺害した人々の子孫は報復を受けて当然だと考える人達が出てきたとのこと。

その結果、ヨーロッパに渡ってきたユダヤ人に対する差別が行われ、また卑しいとされる金貸し業で商才を発揮したこともあり、迫害されたユダヤの人達は自らの信仰を守るために秘かに集まってユダヤの行事を続けたが、それがこっそり集まって陰謀をめぐらせているという疑心暗鬼を生んだとか。

最初は完全版の日記ではなく、生き延びた父親が、アンネの母に対する葛藤や性的表現が書かれた部分を削除し、その版が出版されたらしいです。そしてそれが世界中に広がったあとで、内容が全て収録されたオリジナルの日記が出版されたとのことです。

若い人は言わないかもしれませんが、以前は女性があの日になるとアンネちゃんとかいいました。(古いか?) この日記の中で隠れ家生活を送る中、初潮を迎える時期になったがナプキンが手に入らず悩む描写があり、それを読んだ坂井泰子という人がアンネのような境遇でも容易に使える生理用品を開発しようと考え、日本で初めて紙を使った生理用ナプキンを開発したとのことです。その商品名はアンネナプキンで、それを発売した社名はアンネ株式会社ですが、なので未だにこの部分を書くのにアンネとPCで打つだけでも正直恥ずかしいですね。

「しかし、イスラエル政府によって壁で包囲されているパレスチナに住む人達の中にも、イスラエル軍に怯える日々を日記につけている少女がいるのではないでしょうか。」そのような意味のことを書いて池上さんはこの章を締めくくっています。
 

まあそんなような興味深い解説が各本に対して書かれています。その10冊を挙げると

1章 アンネの日記
2章 聖書
3章 コーラン
4章 プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神
5章 資本論
6章 イスラーム原理主義の「道しるべ」
7章 沈黙の春
8章 種の起源
9章 雇用、利子および貨幣の一般理論
10章 資本主義と自由

宗教や経済が世界の成り立ちに与えた影響や、Tips的なへえ~となる話が満載で知識が無くても楽しく読めてしまいます。(まあ忘れちゃうんだけどね)

例えばイスラムの考えでは、ユダヤ教、キリスト教の元となる旧約聖書、新約聖書は預言者(予言ではない)によって与えられた言葉を残したものですが、コーランは直接の神の言葉を通訳して残したものであり、それは神が天使ガブリエルに命じてアラビア語に訳させたので、本来はその言葉で読むべきであり、アラビア語以外の言語に訳すことはできないということになっているとかね。しかし安心して下さい。建前としては日本語解説書という位置づけで日本語訳されたものも読めるそうです。

池上さんのこの本をきっかけに、上記10冊の中から興味を持ったものを実際に読んでいくのもいいのではないでしょうか。
 

ちょっとどんな本かを書いておく。

アンネの日記 アンネ・フランク
 二次大戦中に迫害されたユダヤ人少女の日記

聖書
 ユダヤ教、キリスト教の教典

コーラン
 イスラム教の聖典

プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神 マックス・ウェーバー
 宗教が経済に与える影響を分析
 (宗教改革の中で、不安から職業労働に従事することが恩寵を与えられるという思想で、働く事が全てというような人が出てきた理由に言及している。それによると敬虔なキリスト教プロテスタント(中でもカルヴァン派の人達)は財産があっても早期リタイアなど考えないはず)

資本論 カール・マルクス
 資本主義の原理を解き明かす経済学の本。資本主義の問題点に言及。

イスラーム原理主義の「道しるべ」 サイイド・クトゥブ
 イスラムが全人類を導く役割を果たすための道しるべ。イスラム教を極端に解釈しテロ思想の元に。

沈黙の春 レイチェル・カーソン
 農薬が及ぼす悪影響を訴え世界が環境問題に取り組むきっかけになった本。

種の起源 チャールズ・ダーウィン
 進化論によって生物学や遺伝学に大きな飛躍をもたらした。また神による創造というキリスト教社会の根底を揺るがした。

雇用、利子および貨幣の一般理論 ジョン・M・ケインズ
 公共事業や金利を下げ投資を活性化させるなど、景気対策の源になった本。(株式市場はしばしば美人コンテストに例えられるがこの本が元らしい。またケインズ理論によって深刻な恐慌はなくなったものの恒常的な財政赤字に悩まされるようになる。)

資本主義と自由 ミルトン・フリードマン
 新自由主義思想を経済学において打ち立てた。自由至上主義者(リバタリアン)のバイブル的存在となる本。変動相場制を主張。ケインズに反対。市場経済の効率性を信頼し、政府の経済介入を疑問視する。

だけど私が実際に読んだのはこれだけw

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