一貫性とコミットメント

一貫性とコミットメント

知らない間に操作され、また知っていても抗うのが困難というのが影響力の武器であります。

この本は例が多く厚いので読むのに時間がかかるけど、言ってることは各章のまとめに凝縮されている感じです。せっかく読んだのでもう一ネタ書きます。今回は「一貫性とコミットメント」について。(前回の記事はこちら
 

一貫性とは、自分がした選択に肩入れしてしまう心理、自分の言葉や態度、考え方などを矛盾しないように一貫したものにしたいと思う心理です。

例えば私が札幌に行きたいと思っていて、なので自分は寒さに強くなっていると思いたいというような心理です。また、あなたは優しい人ですか?役に立ちたいですか?という問に「Yes」と答えてしまうと、質問をしなかった場合よりその後の寄付(のようなもの、社会貢献など)を断れない傾向が高く出るとかそういう調査があるとのこと。

販売の技としての一貫性は、小さいものを買わせてお客の立場をはっきりさせることで、それならこれも必要なはず、と徐々に大きな物へと進んでいくという方法があるようです。

セールスなどで相手にコミットメントさせる(立場を明確にさせる、公言させる)ことができれば、そのコミットメントと一貫性を保つお膳立てができたと考えられます。我々はコミットメントする(立場を明確にする、公言する)と、そのコミットメントに対し一貫性を保とうとします。

これは単純過ぎますが、「英語を話したいですか?」「はい。(←これがコミットメント)」「いい勉強法があります。」という具合。

目標などを会社で書かせることがありますが、書くことは重要で強いコミットメントとなるとのこと。クーリングオフ制度は契約書をお客自身に書かせることによって、契約解除が少なくなったらしいです。(アメリカの話よ) 目標を書いて壁に貼ってるのをちょっとアレだと思っていたけど、我々は書いてしまったことに見合うように行動するものらしい。そうなのかね?

 

公にコミットメント(確約)するということは強い力を持っていますが、公でない場合もけっこう影響を受けるようです。

例えばある実験で、書いて公に公表した人、自分だけに分かるように書いた人、心だけで思う人を対象にしました。

実験では結果が違っているという情報の後で、自分の意見を変えた人が多くいたのは、心だけで思った人です。公表した人は一貫性があるように見られたいので意見を変える割合が少ないのは当然ですが、自分だけに分かるように書いた人も一貫性を保とうとする傾向が高いと結果が出たそうです。

人はころころ意見を変えるのをよくないと思い、一般的にその方が他者からの評価も高く、一貫性のある人間に見られたいのでそうなりますが、自分だけが分かるように書いた人も、何を書いたか既に消してあるので誰にも分からないのにも関わらず、一貫性を貫く傾向が高いのです。

なので、ダイエットしたいとか禁煙したいなど、実際に紙に書いたりすることは有効で、それを知り合いに伝えるなど公に発表すれば更に強力な効果があるということです。特にプライドが高い人に有効とのこと。

 

また「努力を要するコミットメント」の話も面白いと感じました。

「何かを得るために困難や苦痛を経験した人は、同じものを最小の努力で得た人に比べて、得たものに対して価値を置くようになる」

未開地のある部族で、成人になる辛い通過儀礼(叩かれたり、高い所から飛び降りたりみたいな)が「努力を要するコミットメント」の役目を果たすそうです。体育会系で新人しごきをしたりという加入儀礼があったりするのはこれが原因のようです。会社の新人研修もそうなのでしょうね。それを耐えたということで、自分が所属したその集団が価値あるように感じられる。

本にはなかったけど女性が身持ちを堅くするのはこの原理ですよね。この本には他にも言われれば経験や本能的に知っているということが書かれていますが、若い頃にこういうことを系統立てて解説されるとその後の人生で役に立つのではないでしょうか。

 

ほとんどの人は、自分の言葉や態度、信念、行為を一貫したものにしたい、あるいはそう見られたいのです。約束を守る理にかなったちゃんとした人ということですから。

一貫性のある行為は、社会から高い評価を受けるし、一般的に日常生活において有益なのですが、とはいえ一貫性を保つためにセールスで不要なものを買うなど、そういう馬鹿げた一貫性を保つように振る舞う必要はありません。一貫性を貫きたいあまり、彼女にこれだけ貢いだのだから別れたら勿体ないとか、占い師にマインドコントロールされないようにしなくては。

このブログでは実家に戻ったと思ったら出てみたり、福岡に移住とかいいつつも札幌に住むつもりだし、既に一貫性は破綻しているので今後もぶれぶれでいこうと思ってます。

 

それは置いといて、今回はここだけが重要です。

人生で「ん?何かおかしいかな?方向が違ってきてるかな?」と思うことはあるはず。そう思った時、最初のコミットメントが間違っているか明確でなければ次のように考えればいいとのこと。

「今知っていることはそのままにして時間を遡れるとしたら、同じコミットメントをするだろうか。」その時、最初に湧き上がってきた感情が、役に立つ答えである。

 

本の最後ではこうまとめています。我々の世界は急激に複雑になってきていて、あらゆる情報から物事を考えているわけにはいかなくなる。そして「一貫性を保ちたい心理」、「何かを受けたらお返しをする返報性」、「多くの人と同じ行動をすることが安全」、「権威のある人の言うことをきくのが無難」など、簡便な方法で選択することがますます多くなる。ピーピーという鳴き声を聞くと(たとえテープレコーダーでも)機械的に母親行動を始める鳥もいるが、こういう簡便な方法は生存する上で有効であり、この反応の信頼性を脅かすようなやり方で利益を得ようとする試みがあると、我々がこういった簡便法を使いにくくなってしまう。この方法で影響を与える可能性を高める分には必ずしも搾取とはいえないが、この反応の引き金を捏造することはインチキであり、そういう人達には対抗していく必要がある。

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